王子な秘書とシンデレラな御曹司
市橋理香は慣れたように空気清浄器のスイッチを付け、今日はやや控えめだけど丈の短いベージュのワンピのポケットからシガレットケースを取り出した。
ええっ?煙草?
「吸う?」
「いらないです」
敬語になって断る私。
市橋理香は細いメンソールの煙草に火を点けて、重役専用の灰皿を使用。
「今日で総務に戻るんだって?」
美味しそうに煙を吐き
上から目線で言われてうなずく私。
「信じてもらえないかもしれないけど、今回の敏明様の不正行為には私達秘書課は関わってない」
真面目な顔で言われ
私は大きくうなずく。
それは聞いた。
本当に隠れて田崎専務と俺様副社長。そしてごく一部の社員が関わっていたけど秘書達には無関係の話だった。
「あんたに信じて欲しくて」
「大丈夫。信じてる」
私が返事をすると、やっと表情が柔らかくなる。
「よかった。それだけなの」
「副社長もそれは何度も社長に言ったから大丈夫」
「他の人はいいよ。あんただけに信じてもらえれば」
「え?」
ニヤリと笑う笑顔の市橋理香は魅力的だった。
いつもの可愛い顔より
こっちの方がよっぽど素敵だと思う。
「色々邪魔してごめんね。でもこの世界は自分のボスが一番なの。それもわかってほしい」
「うん」
「あんた。よくやってたよ」
「ありがとう」
いっぱい意地悪もされたけど
市橋理香は秘書のプロ。
見習って教えてもらう事も沢山あったし
秘書としてのプライドもある人だった。