王子な秘書とシンデレラな御曹司
「高橋部長からいただきました」
後輩が可愛い缶に入ったクッキーの詰め合わせを高く上げ、女子社員の机に配ると歓声が上がる。
おぉすごいよ部長
今年は有名ブランドの缶入りクッキーじゃん。
これ高いんだよね。
副社長が後継者になって
肩の荷が降りて気前よくなったのかな。
ピンクの丸い缶を手にして
先月のバレンタインを思い出す。
副社長は私のチョコを喜んでくれたなぁ
ひとりで食べるって
雅さんにもあげないって
返しませんよ……って
思い出すと涙腺がまた緩む。
今も忘れられない人。
でも
忘れなきゃいけない人。
総務に移動してからも
何度か携帯に電話が来ていたけど
『忙しいので内線で電話下さい』って……冷たい言い方をして私は彼を拒否した。
あの優しい声を聞くと
心が動いて
戻れなくなりそうで怖い。
もう
忘れたいんです。