王子な秘書とシンデレラな御曹司

「今日はどうしましょう?雅さんはどうしたい?」

クロワッサンを食べ終わった私を見て彼は言う。

初のお泊り。
濃厚な夜を過ごし
ふたりで朝食。

「別にノープランだよ」

マグカップを渡されて
彼が淹れたコーヒーを飲む。

おいしい。
どうしてだろう
彼が淹れるとなぜか美味しい。
専門的な物はないのになぁ。ちょっと悔しい。

「天気もいいからドライブする?買い物とかある?」

マグカップを持ち
グレーのパーカーを着て
ちょっと背中を丸くして、彼は私の隣に滑り込む。
猫みたいだね。

「何もないよ。啓司さんは?」

「家に居るなら、昨日の夜の続きをする?」

「えっ?」

「冗談だって。雅さん本気にした?可愛いなぁ」

「変な冗談言わないで」

あー焦った。本気にしたよ。
あの濃厚すぎる夜をまた朝っぱらからなんて……。

「本気でもいいけど」
そっと耳を甘噛みするので慌てて身体を避けてしまう。
朝っぱらから何をするか。

「えーっとえっと。出かけましょう。朝は軽くパンにしてお昼は麺類とかいいかも」

「いいですね。うどんはどうです?」

いいねいいいね。うどん大好き。
私は思いきりうなずくと

彼はスマホを取り出し何かを調べ始める。

何?美味しいうどん屋さん?どこどこ?
犬のようにシッポを振って待っていると
爽やかな笑顔が私を包む。

「行きましょう。お昼過ぎちゃうけど問題ないです。帰りは夜の便で」

「夜の便?」

「うどんと言えば香川県でしょう」

「はいっ?」
自分の声がどこから出たのかわからない。なんですって?香川県?私の故郷?

「早く出ましょう。一度家に帰って着替えます。そして空港直行。うどんを食べてから雅さんのご両親に結婚のご挨拶をします」

「なんで?」狭い部屋で悲鳴を上げる私。

「何で?その質問こそ変でしょう。さぁ早く行きますよ。雅さんのご両親に会えるのが楽しみだ。」

どこからそんな話になったの?
お昼を食べる話じゃなかったっけ?
どうして
実家に結婚の申し込みって話になるの?

「さぁ行きますよ」

自信満々な笑顔が逆に怖い。



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