王子な秘書とシンデレラな御曹司
「兄さん。分相応って日本語わかる?どっから見ても後継者は俺」
「敏明。僕は思うんだけど、一緒にこの会社を……」
「恥をかく前に、早く出て行け」
「でも……」
「この会社は俺の物」
そう言い残し
イケメン御曹司は市橋理香の肩を抱き
笑って部屋を出て行ってしまった。
なんだよアレ。
いや
怒る前にやる事がある。
このフランス語をどうにかしなきゃ。
どうしよう……どうしよう。
一時間以内に返事を出さなきゃいけないなんて。
頭の中がパニックになってしまう。
時間が足りない
やっぱり総務の平社員が秘書になるなんて、ありえない。
足が震えてきた
「竹下さん」
心配そうな顔で副社長が私を見る。
心配かけてはいけない。
精一杯できる事をやろう。
「今、海外支社担当の者をこちらに呼びます。翻訳してもらい返事をそのまま書かせます」
「いや、時間が足りない」
「わかってますけど、もうそれしか方法がないんです」
つい悲鳴のような声になってしまう。
だって、それでも
間に合わないかもしれない。
「大丈夫。見せて」
「副社長」
「問題ないです」
副社長は私からファイルを奪い
机の端に腰をかけ
ブツブツと集中する。
「そんな顔しないで、大丈夫。僕が返事書いて送るから竹下さんは違う仕事して下さい。フランス語ならできるから。以前あっちの大学でも勉強してたんですよ」
優しく言われ
素直にうなずく私。
フランス語できるんだ。
よかったぁ。