王子な秘書とシンデレラな御曹司

気まずい雰囲気に着信相手を確認するのも忘れ

「あ、あー。切れてしまいました」
引きつりながら笑って副社長に言う私。

「あーそうでしたか。それはざっ、残念でしたね。ははは」
負けないくらいの引きつり笑い。

とんでもない空気が流れてるかも。

「帰りますね。では副社長もお元気で。さようなら」

「はい。お疲れさまでした。気を付けて」

顔も見ないで逃げるように部屋を出た。

なんだこれ

なんなんだ
何だあの流れは。

まだ酔ってるのか私は?

夢だ。きっとこれは夢。
ないない。ありえない。

落ちつけ雅!
ドキドキする心臓よ落ち着け!

私はただの総務の女。
期間限定の臨時秘書。

相手は御曹司だぞ
私なんて身分違いだし
仕事上のお付き合い

相手は私の事なんて何も思ってないだろう
口うるさいヤツって思ってるだろう

お見合い
そうお見合いの話があるんだよね
ホテル王のお嬢様と
それが叶ったら大金星だ。
後継者間違いない。
詳しい内容を部長か常務に聞かなきゃいけない。

次から次へとミッションクリアしなきゃ。


もう

もう!
私ったら本当にもう!

ためらいが混乱になり
混乱が怒りになり
怒りが悲しさになる

エレベーターを使わず
非常階段の重い扉を開いて
冷たい階段に座り込み

顔を覆って

ひとりで膝を抱え込む。

ダメだよ私

ダメだからね

そこは分別つけようよ。


でもダメなんだ。






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