落ちてきた天使
魔法使いとか神様とか、こんな時でも馬鹿げた事を考える余裕がある自分に気付いて、つい笑みが零れる。

おかしい……変なの。

過去の話をこれからするというのに、まさかその直前に笑えてるなんて思いもしなかった。


花火が消えた夜空には、月や星が輝きを放っている。


駅前から会場までの道のりを案内するかのように灯った屋台の提灯は、所々途切れ始めて、花火大会の終わりを示し、いつもと変わらない景色が戻りつつあった。


風は少し冷たい。だけど、皐月が隣りにいるからちっとも寒くない。


大丈夫。私はもう一人じゃない。




目を閉じて新しい空気を体内に取り込むと、一気に吐き出す。そして、ゆっくりと口を開いた。






「私が施設に入所するニ年前、当時私は5歳だった」



幼い頃の記憶なんてほとんどないのに、あの日のことだけは今も鮮明に覚えてる。



人生最大の後悔をした日。
私が、過ちを犯した日だーーーー。



「肺炎で初めての入院したの。ママは付き添い看護でずっと一緒にいてくれて、弟は家で仕事してるパパと近くに住むおばあちゃんが面倒を見てた」



弟には悪いけど、あの時の私はママを独占出来て嬉しかったのを覚えてる。



弟のことは大好きだった。
でも、ママを取られた気がして寂しくなる時があったのも事実。


ママは決してどちらかを特別扱いなんてしなかったし、お姉ちゃんだからって理由で私を我慢させることも叱りつけることもなかった。


でも、弟の方が手が掛かるのは仕方がないことで、それに5歳の小さい私がヤキモチ焼くのもまた致し方ないこと。


だからママは弟がお昼寝で寝てる時は、私をたくさん抱っこして甘やかしてくれた。


その時間が堪らなく好きで、数少ない私の幸せの記憶だ。





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