落ちてきた天使
皐月を信じたい、でも怖い。

私は不安に押し潰されそうになって、咄嗟に皐月から視線を逸らした。



「っっ」

「あっ……」



その瞬間、息を飲んで身体を強張らせた皐月。


私、今……間違えたかもしれない。

真摯に向き合おうとしてる皐月の気持ちから逃げて、一番傷付けたくない人を傷付けてしまった。


私の肩に置いた皐月の手が、力なく肩から腕を滑り落ちていく。

その手は膝の上で拳を作っていた私の手に着地すると、一瞬弱々しく握り直された。

そして胸を抉るような重い息を吐くと、皐月は不安げに揺れる声でゆっくりと話し始めた。



「誤解されたくないから全部話す。もしかしたら、もっと彩を傷付けることになるかもしれない。でも、これだけは信じてほしい。婚約者って勝手に決めたのは親父で、縁を切った俺からしたら全く関係のない話。俺には彩しかいない。お前以外欲しくない」



皐月の言葉が鼻をツンとさせた。

嬉しい……
つい“私もだよ”って言いたくなる。

でも、今は素直に言えない。

私の手を握る生温かい手。
少し汗ばんでる。

皐月も緊張してるんだ、不安で不安で仕方ないんだ。

私の気持ちが離れつつあることを感じてるんだ、きっと。




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