落ちてきた天使
「天使が落ちてきたかと思った」
婚約者って何だっけ……


それさえもわからなくなるぐらい、私の頭の中は酷く困惑していた。


妻になる人。

佳奈恵さんは皐月の奥さんになるってことで、皐月と佳奈恵さんは近い将来結婚して一緒に暮らす。


あれ、じゃあ私は?
彼女じゃないの……?

皐月にとって、私は何?




“三橋佳奈恵は俺の婚約者だ”発言を聞いた直後、音という音が全て遠退いた。


心臓が激しく動き過ぎて吐き気がする。

耳は塞がないでと言われたけれど、塞ぐどころかここから逃げ出したい衝動に駆られた。


やっぱり私は幸せになれない運命なのかもしれない。

全ては自分の気持ち次第だって言い聞かせてきたけど、こればっかりは無理だ。


婚約者がいる。
つまり、皐月の隣りにいていいのは私じゃない。今も、未来も。この先、一生。



「……や!おい、彩!」



肩を揺さぶられてハッと我に返った。

焦点が合うと、すぐ目の前に皐月の顔があってドキッと心臓が跳ねた。


……皐月が好き。


その気持ちは今も変わらない。

なのになんで…
私は信じられないんだろう。

こんなに不安になってるんだろう。






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