だって、キミが好きだから。


「脳のことについては解明されていないこともたくさんあって……手術をすることで、どこまでダメージがあるかは私にもはっきりわからないんです」



先生の言葉が、ひとつひとつナイフのように胸に突き刺さる。


だけど先生は、お構いなしに話を続けた。



「経験や思い出の他に日常生活に支障を来すほど、ありとあらゆる記憶を失くしてしまう可能性もあれば、今までの経験や思い出がところどころ抜け落ちているだけの可能性もありますし」



ズキンと胸が痛んだ。


これって……間違いなくあたしのことを言ってるんだよね。



「逆に今まで忘れていたことを全部思い出している可能性もある。脳というのは、誰にも予測がつかない現象が起こると言えるんですよ」



「……そう、ですか」



蚊の鳴くようなお母さんの声は、魂が抜け落ちて心ここにあらずって感じだった。


バクンバクンと高鳴る鼓動。


こんな話、聞きたくないよ。


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