だって、キミが好きだから。
わ、珍しい。
普段めったに雪なんて降らないのに。
立ち止まって空を見上げると、さっきまで青かった空が灰色に染まっていた。
どうりで寒いと思ったわけだ。
どれくらいそうしていたんだろう。
気付くと、寒さで全身が小さく震えていた。
だけど、それさえもが生きていることを感じさせてくれる。
だから、小さなことでも感謝しなくちゃ。
「北上……?」
学校じゃない場所で名前を呼ばれるなんて、ついついビックリして声のした方を見る。
そこには、黒のダウンジャケットを羽織ってジーパン姿の矢沢君が立っていた。
「や、矢沢君」
どうして、こんなところに。
ハラハラ舞う雪の中に、矢沢君の姿はすごく幻想的。
相変わらず、今日もすごくカッコ良い。
ドキンと胸が高鳴ったことに、気付かないフリをした。
気付いちゃいけない。
何事もないように振る舞わなきゃ。