だって、キミが好きだから。
「何してんだよ?んなとこで」
矢沢君は雪を避けるように、走ってあたしの目の前までやって来た。
この前のこともあるしなんだか気まずかったけど、矢沢君が普通にしているのを見て肩の力が抜けた。
矢沢君は頭に乗った雪を手でサッと払う。
男らしいゴツゴツした手に思わず見入ってしまった。
綺麗な肌に整った顔立ちと、左耳から覗く小さな輪っかのピアス。
私服姿もすごくオシャレ。
「ちょっと用事があって。矢沢君は?」
今まで仲が良かったわけでもないのに、こうして話していることが不思議でたまらない。
「姉貴がここで看護師してんだ。夜勤で出かけてったんだけど、ロッカーの鍵忘れたっつーから仕方なく俺が届けに来た」
やれやれと言いたげな顔で、矢沢君が手のひらに乗せたロッカーキーを見せて来る。