だって、キミが好きだから。

さよなら



「菜花ちゃん……!こんなところにいたの?」



院内をさまよっていたあたしの肩をポンと誰かが叩いた。



振り返るとそこには、白衣を着て髪を綺麗にひとつにまとめている看護師さんの姿。



誰だっけ……?


名前が思い出せない。



「す、すみません……部屋がわからなくなっちゃって」



毎日毎日、あたしはどうやって過ごしているんだろう。


昨日のことは、今日になると忘れている。


朝、目が覚めたら知らないところにいて、パニックになりかけのあたしを看護師さんがなだめてくれる。



きっと……同じことを毎日繰り返しているんだと思うけど。


あたしにはもう、真実がわからない。


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