偽悪役者
「あれ…?柊……?」



静音と橘が他の配給スタッフと料理を運んでいると、玲斗が近付いて来た。


顔がバレることは想定済みなので、橘はスルーして料理を並べる。



「ひ、柊さん…」


「あんたここで何やってんの?」


「まさか、ここのスタッフ?」



玲斗の声に、琅提・雅・鏡鵺も反応する。



「何だか、驚き方がオーバーですね。」


「ああ、そうだな。」



4人を盗み見た篠宮と椎名は、単に驚くというよりも動揺しているように見えた。



「スタッフじゃない。単なる応援のバイト。」



静音は、4人の反応を分かっていたようで淡々と話す。



「あら、柊さんじゃないの。」



来栖とは別のウェイターからシャンパンを受け取っていた岨聚が、静音に気付き近付いて来た。



「どうも。お久しぶりです、岨聚様。」


「へぇ。貴女、ここのスタッフなの?」



先程の4人との会話は聞こえていなかったようで、同じことを聞かれた。



「いえ、応援のバイトです。今はフリーターなので。」



この後の接触を考えて、推測可能な特定の企業ではなく、時間の都合もつきやすいフリーターを装う。
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