偽悪役者
バックヤードから会場をチラミした橘が、羨ましそうに言う。


しかし、公立でしかも決められた学区の為、事前に良し悪しなど分かるはずもないので静音は定型文で答えた。



「というか、美男美女ってあれが?」


「そうでしょうよ。同級生って括りになると、結構気付かないもんなんだねー。特に、あの男子2人の顔がイケメンに見えないなんてさ。いつも、篠宮さんとか要さんとかといるからかな?」



「失礼だから。」


「悪かったな。」


「減給するぞ。」



橘の言葉に、静音・篠宮・要の3人は、間髪を入れずに返した。



「あ…、すみませーん。」



しまった、と橘は思ったがもう遅い。



轢夲と羮芻が用意した高級ホテル用のインカムは、小声であっても拾ってくれる高性能仕様だ。


そして、実働部隊と支援部隊の会話は、全員に配信されるようになっている。



必然的に、会話が筒抜けということになる。



「はあ…、お喋りはそこまでだ。柊、橘。料理が少なくなってきたから運んでくれ。」



「了解。」


「了解でーす。」



飲み物を運ぶウェイターとして会場に居た来栖より、呆れた声で指示が飛んだ。
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