好きだと言ってほしいから
 結果、この会社に無事就職を決めた私は彼に告白をした。あんなに緊張したのは初めてだった。体が固まってしまって緊張のあまり何をどう話したのかあまり覚えていない。正直告白することだけを考えていて、その後のことは頭になかった。だから彼からOKの返事を貰ったときは頭が真っ白になった。

 そうなのだ。逢坂さんは私の告白に一瞬驚いたようだったけれど、すぐにとびきりの笑顔をくれた。そして『じゃあ俺たち、付き合おうか』と言われたのだ。

 私はその時になって初めて気づいた。告白をしたその先には、彼と恋人同士になるというとんでもなく幸せな結果が待っていたことに。

 正直、長年の想いを伝えたいということでいっぱいいっぱいだった私は、そこまで考えていなかった。もちろん、告白することで迷惑がられたらどうしようとか、私のことを覚えていてくれるだろうかとか、そういう心配はあった。だけどまさか、あんなにあっさりOKの返事をもらえるなんて思ってもみなかったから、私はかなりうろたえてしまった。私の狼狽ぶりをくすりと笑った逢坂さんに『麻衣』と名前で呼ばれたときは、死んでもいいと思ったくらい。その日からもうすぐ二年。私はこうして今でも逢坂さんの恋人だ。

 だけど、それもいつまで続くか分からない。毎日そんな不安と背中合わせで過ごしている。

 逢坂さんに不満はない。私は今でも、ううん。片想いしていた頃より今の方がもっと彼を好きだし、それは日に日に深くなっていく。昨日よりも今日、今日よりも明日の方が逢坂さんを好きになっている。

 でも、そんな気持ちになっているのは私だけ。私の彼への愛は日に日に重みを増すというのに、彼はきっとそうじゃない。付き合う前から、そして付き合い始めてからも、逢坂さんはずっと優しいけれど、彼の私に対する気持ちが私と同じ意味を持っているかは自信がない。

 彼が私に優しくしてくれるように、彼は他の誰に対しても優しいし、それに私はまだ一度も彼に「好き」だと言ってもらったことがないから。
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