好きだと言ってほしいから
「麻衣はそのままでいいよ。ちっちゃくて柔らかくて。筋骨隆々な麻衣なんて想像できないな」

「それは私も嫌です」

 ほんのり熱くなる頬を無視して唇を尖らせた。“麻衣はそのままでいい”。彼がそう言った。それは、そのままの私を好きでいてくれるということ? はっきりとした言葉をくれないだけで、逢坂さんが私に優しくしてくれるのは、私を好きだからだと信じていいの?

「麻衣、今日は何だかいつもと……」

「あれー? 麻衣じゃん!」

 逢坂さんが何か言いかけたとき、入り口の方から大きな声がした。振り向くと首にタオルをかけた平岡くんが立っている。

「あれ、平岡くん?」

 真っ直ぐこちらにやってくる平岡くんが「よっ」と私に軽く手を上げてから逢坂さんを見た。

「どうも、こんばんは。すごい偶然ですね」

「こんばんは。君もここの会員?」

 逢坂さんが訊ねると平岡くんは首を振った。

「いえ、本当は違うんですけどね。今日はたまたま友達に誘われただけですよ」

「平岡くん、どうしてここにいるの?」

 彼は東京の会社で働いている。だからいつも私たちの集まりに参加できないことが多いのに、つい先週会ったばかりでまたこっちに帰ってきているということだろうか。
< 34 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop