好きだと言ってほしいから
「ああ、ちょっと出張でこっち来たからついでに実家に寄ったんだ」

「そっか、びっくりした。会社辞めたのかと思っちゃった」

「あほか、んな簡単に辞めるわけねーだろ」

「だよね」

 くすくす笑う。すると平岡くんは楽しげに言った。

「辞めねーけど、俺、来月からこっち戻ってくるよ」

「え?」

「俺、こっちの支社に異動願い出してて通ったから。母親が体壊しちまってさ。まあ、俺の親も年だし、地元の方がお互い安心だろうってことで」

「そ、そうなんだ」

「だからこれからはお前らの飲み会に毎回参加できるぜ、喜べ」

 ぐしゃぐしゃと乱暴に私の頭を撫でる平岡くんに抗議の声を上げながら、私はまた言い知れない不安を覚えた。
 “異動願い”。それは本人が希望して出すものだ。

 逢坂さんのことを考える。彼はあれからも何も言わないから、あの日、人事部に来てたのはやっぱり研修の件だったと思っている。今日もこうして二人で会って、ジムで楽しい時間を過ごしているし、不安になることなんてないはず。だけど何かが私の中で引っかかっている。

「だからこれからは逢坂さんに会うことも増えるかもしれませんね」

 ニカッと笑った平岡くんに、逢坂さんは無反応だった。
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