好きだと言ってほしいから
 私も最初のうちこそ何度もトライしたけれど、最近ではもうすっかり諦めモードだ。朝はこうして逢坂さんと一緒に入館することが多いし、帰りは誰か帰り支度をしている人の後についていく。

「逢坂さん」

「うん?」

「えっと、今夜も……寄ってもいいですか?」

「今日も?」

「あ……め、迷惑ならいいんです。逢坂さん、忙しいから夕食だけでも用意を、って思っただけで……」

 慌てて言い訳をした。彼の声に迷惑そうな響きを感じてしまい胸がズキズキ痛む。昨夜に続けて今日も家に行きたいだなんてずうずうしかったかもしれない。彼にそう言われたような気がして私は俯いた。

 毎朝こうして会っているのに夜も会いたいだなんて、仕事で疲れている彼にとっては迷惑かもしれないのに。私は一日中一緒にいたいくらいなのに、彼の方はそうじゃないことくらい理解しているつもりだけれど。

 頭上から溜息が聞こえてきた。ますます泣きたくなってしまった。けれど彼は宥めるような仕草で私の頭を撫でた。

「迷惑だなんて言ってないだろ? 麻衣こそお父さんの食事の用意もあるし、俺のところにばかり来て大丈夫なのか、心配になっただけだよ」

 優しく私を見下ろす彼に、私は安心してほっと息を吐く。

「お父さんは平気です。帰りも遅いし、それにもし私が間に合わなくても、ちゃんと温めて食べられるように用意してきているから……」
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