好きだと言ってほしいから
 震える声で返事をする。
 彼は頬から一度手を離すと、私をギュッと抱きしめた。

「麻衣……!」

 そして再び両手で私の頬を包み込む。すぐに熱いキスが落とされた。

「君を必ず幸せにすると、誓うよ……」

 彼のマンション。私たちはまだ玄関で靴を履いたまま。
 交わされた約束は、永遠の誓い。私、逢坂さんと、結婚します……!

* * *

 総務部庶務課、私のデスク。脇には小さなダンボールが一箱。筆記用具やノート、何故だか分からないけどキャラクターものの団扇。その他こまごまとした私物を私はそこに押し込んだ。

 いよいよ今日でこの職場ともお別れだ。明日の夜には逢坂さんと一緒に飛行機の中。
 逢坂さんからのプロポーズを受けたとき、既に彼の異動まで残り一ヶ月を切っていた。私たちは会社に慌しく結婚することを報告し、私は急いで引き継ぎを済ませた。会社は私の代わりに派遣社員を一人雇うことになった。

 誰にでも出来る仕事とはいえ、引き継ぐべきことは意外にたくさんあった。それぞれこの会社のルールがあるから、それに沿ってやってもらわなければならない。私は念のために、仕事の詳細を記したノートを作っておいた。これを見てもらえば、きっと分かるはず。

 幸い新しく来てくれた派遣社員の女の子は、私よりも物覚えがいいようで、すぐにてきぱきと仕事をこなしていた。ほんのちょっぴり立場がないと感じてしまったけれど、この短期間で覚えてくれるのだからありがたい。

「麻衣、いよいよ今日で最後ね」
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