好きだと言ってほしいから
 定時近くになって、葵ちゃんがやってきた。

「うん。何だか本当にあっという間で……寂しいよ」

 私がしんみりとすると、葵ちゃんが「何言ってんの」と私の背中をバンと叩いた。葵ちゃん、けっこう馬鹿力なんだから……。

「二年経ったら戻ってくるんでしょ?」

「うん、多分ね。でもまたすぐ行くことになりそうだって、浩太さんが言ってた」

 ダンボールにガムテープで蓋をしてから顔を上げると、葵ちゃんがニヤニヤ笑いで私を見ている。

「な、何……?」

「もー、麻衣ってば、ずっと“逢坂さん”だったのに、いつのまに“浩太さん”に変わってるのよ」

 指摘されて私の顔にボッと火がつく。さらりと流してくれればよかったのに。

「……なっ、だ、だって……、いつまでも苗字呼びはおかしいって浩太さんが……」

 赤い顔を隠すように、私は用意していた雑巾で机を拭き始めた。

「うんうん、そうよね。だって麻衣だって“逢坂さん”になるんだもんね」

「ま、まだ田辺だもん」

 ムキになって反論すると、葵ちゃんは声を出して笑った。

「今日までじゃん。明日入籍してから行くんでしょ?」

「う、うん。入籍だけ先に済ませようってことになって……どうしたの?」
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