Tell me !!〜課長と始める恋する時間
お弁当の包みを片付けているとドアが開く音がした。


私のいる場所にゆっくりと近づいてくる足音。


そして、


「やっと見つけた。」


「乾くん…。」


「桃原さん、資料室はお弁当を食べる所ではありませんよ。」


そう、私はあの日からこの滅多に人が入ることのない資料室の片隅で一人お弁当を食べていた。


課長とあんなことになってもう第三会議室にはいけない。


だけど、デスクで食べると課長と居合わせる可能性もあるし、今となって同じ部署内の人を好きになるリスクの大きさを実感する。


嫌でも避けようがないのだ。


そして、探しに探して漸く見つけた場所がここだ。


「今時のJKはトイレの個室らしいですけどね。さすがに女子トイレまで探すわけにはいかないしここに居てくれて良かったですよ。」


そう言いながら、古いパイプ椅子を出してきて私の隣に座る乾くん。


資料室の隅に置かれた小さな台に並び座る私達。


「っで、何があった?」


その台に片方の肘を付き、私の顔を覗き込んでくる乾くん。


「なにがって…なによ。」


「この期に及んで惚ける気?」


「別に惚けてなんかいないよ。別に話すことないし。」


「ふうん。俺には言えないって訳か。じゃあ、課長に聞くしかないか。それじゃ、ごゆっくり。」


と、立ち上がる乾くんの腕を掴み引き留める。


「俺がもう一度、座るってことは全部話すって事ですよ。いいの?」


乾くんが真剣な目で見てくる。


「うん…、分かった。話す。」


そう言うと乾くんはまた古びたパイプ椅子に腰を降ろした。







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