生徒だけど寮母やります!2

途端、静かだった廊下から数人の足音が聞こえて景は後ろを振り返る


その足音は徐々に大きくなり、鈴菜と柊も振り返ったところで足音は正体を露わにした


「いた.....!」


「咲夜!と.....日向とライと結斗.....みんな揃ってる」


景がパッと顔を輝かせて名前を呼ぶと

「お疲れ、3人とも」

「お疲れ様」

市河と結斗が声を掛けてくれる


咲夜に続いて教室に入った結斗は景の元まで来ると

「会いたかったよ景ちゃん。誰かに集客目的であり得ないほどシフト入れられて、なかなか会いにいけなくてごめんね」


と景の頭を優しく撫でながら申し訳なさそうに詫びた


「あー女の子の集客多かったし、あり得んほどシフト組んでホンマ良かったわー」


横で聞いていた鈴菜がニヤッと笑って言うと、結斗は涼しげに「それは良かった」と王子スマイルを浮かべる


そして誰も口を開かず、一瞬の静寂が教室を包んだ後


3人は一番後ろに立っているライが一言も発していないことに気がついて、そちらに視線を向けた


難しい顔をする彼に柊も僅かに首を傾ける


ライはそのまま無言で鈴菜の前まで歩くと、ギョッとしている彼女に向かって口を開いた


「全部聞いた。保健室にいる、俺の本当の母親のこと。」


次の瞬間、鈴菜の顔色が一気に変わる


それははじめは驚愕で


次第に恐れへと変わっていくようだった


景はそんな鈴菜を真剣な面持ちで見つめながら思い出す


入学当初、彼女はライに対して「九雷家のライの実の母親は病気で寝たきりだ」と伝えていた


しかし事実は異なり、ライの実の母親はこの学校の養護教諭だった


それを踏まえて、ライと鈴菜は相手に何を言うのだろうか


あまり状況を把握していないものの空気の重みを感じ不安そうな表情で黙っている柊の手を握り、景はその様子を見守る


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