生徒だけど寮母やります!2
「あなたたちは今後、月沼トレーディングのことも敵に回すことになるでしょう?伊吹グループが経営難に陥って結斗君が味わっている苦しい思いを、きっと月沼君もする事になるでしょうね。友情も壊れてしまうかもしれないわ。それでも、やるのね?」
月沼の、小高家へと行くため背中を押してくれた優しい笑顔が真っ先に脳裏に浮かんだ
すぐに「はい」と言わなくてはならなかったのかもしれない
それが出来なかった景は、唇を浅く噛んで視線を先生からずらした
結斗も、ライも頷くことが出来なかった
「どうなの?」
はっきりと答えを出さない生徒たちに、先生が再び尋ねる
私は覚悟を持っています、と
あなたたちも今ここで覚悟を持ちなさい、と
そう言われた気分だった
1つ深く息を吸って気持ちを落ち着かせた結斗が、目つきをかえて先生を見据える
そして口を開きかけたその時
「ここにいたっ.....!!」
駆け足で勢いよく保健室に入ってきた人物を振り返り、景たちはあっと声をあげた
「鈴菜ちゃん、有姫ちゃん.....月沼くん.....」
今まで構内を探していたのか肩で息をする三人の名前を呟く
「なんで3人がここに.....?」
咲夜に問われ、3人で全員の注目を浴びた有姫は膝に手をついて息を整えながら、目線を上げて景と男子たちを鋭く見た
「さっき寮の窓からいるはずのない元生徒を連れて学校に帰ってくるあんたたちが見えたのよ。ナゼでしょうねぇ!?なんか私、いてもたってもいられなくて頭がおかしくなりそうだったのよ。何も知らない月沼君が許せなくて、もどかしくてね」
感情を高ぶらせ瞳に炎を宿した有姫は、言い終わってからチラリと月沼を見る
「だからね、鈴菜捕まえて外に出て、男子寮A3階の月沼君の部屋の窓にたくさん石を投げつけて呼び出したの」
「うちは石投げてないしメッセージ送れば良いのにってずっと思ってたんやけどな」
傍観していたらしい鈴菜は冷静に感想を述べてから、そんな事よりもと隣に険しい顔で立つ月沼を見る
「有姫がな、いや、止めなかったうちも心の底ではそれを望んでたから同罪やねんけど.....知ってること独断で月沼君に全部話して問い詰めたんよ。それで色々と月沼君の本心を聞いてん。それを聞いた上で、景や伊吹君ともちゃんと話さないと次に進めないなって確信したから、ここに一緒に来たやんか」