真夜中の恋人
母は父をとても愛していたけれど、女の出入りが激しい父は、やがて家に居つかなくなった。

地元で起業し成功した父は、そこそこ地位もお金もあり、尚且つ女好きする容姿だった。
こんな父は、女たちの目に魅力的に映ったのだろう。

母はわたしが十歳になる頃、わたしを置いて一人で家を出た。
あのときの母がわたしを見る目を今も忘れられない。

わたしの顔は、父に似ているから。
悲しみと憎しみが混じったような蒼く憂いた瞳を思い出すだけで、窒息するように苦しくなる。


それでも、わたしは愛されたかった。

母に捨てられたわたしの愛情は真っ直ぐに姉へと向かった。

姉も応える様に、わたしをとても可愛がってくれた。

余計なものは一切必要なかった。
ただ姉の愛情だけがあれば、何も要らなかったのに。

十六歳の夏の日に、わたしはそれすらも失った。



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