真夜中の恋人
朝目を覚ますと、わたしはベッドに一人きりだった。

それはいつもの事だ。
乱れたシーツが情事の激しさを物語っているけれど、まるで初めからここに一人で居たような錯覚に陥る。

確かに昨夜、タカヤに何度も抱かれたと言うのに。

残念ながら、わたしとタカヤの間に愛なんて感情は存在しない。

タカヤはわたしを抱くときに必ず『可愛い』と口にするけれど、それはタカヤより一回り以上若いわたしに、彼が素直に口に出来る数少ない言葉の一つなのだと思う。

愛人の契約を結んでいる以上、わざわざ滑稽なセリフを吐いてまで、わたしを喜ばせる必要なんて無いのだから。

そんな事を考えていると、唐突にドアが開いた。


「おはよう、ナツ」

「あ、おは、よう」

昨夜、声を上げ過ぎた所為か、普段では出ないような低い声になってしまった。

慌てるわたしを見て、タカヤはクスリと笑う。



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