真夜中の恋人
「お姉ちゃん」
そう呟いたわたしの声は、あの頃のままで。
遠ざかっていく姉の後ろ姿をただ呆然と見詰めていた。
「ナツ、どうした?」
声をかけられてハッとする。
顔を上げると、タカヤが怪訝そうにわたしの顔を覗き込んでいた。
「ううん、なんでもない」
「ナツ?」
「ごめんなさい」
タカヤを置いて、逃げるようにレストルームへ向かった。
姉に存在を否定されたような気がして堪えられなかった。
姉は、わたしをまだ赦してはいない。
もう赦すことなんて、無いのかもしれない。
絶望にもにた感情がわたしの心を覆い尽くす。
レストルームに続く通路で「美奈」と女性の声で呼び止められた。
振向かなくても誰の声だかわかる。
「お姉ちゃん……」