真夜中の恋人
「伊原社長、お話中すみません」
声を掛けられ、彼が振り向く。
耳打ちされると何度か頷いて、それから「ごめん、また今度ね」と足早に立ち去っていった。
……伊原社長って。
あの人が、パーティの主催者?
「ナツ、行こうか」
背後から近付いてきたタカヤが、わたしの腰を抱いて引き寄せる。
さり気なく身体を離すように、タカヤの胸に手を付いて彼を見上げた。
この瞬間も、姉に見られているような気がして胸が痛かった。
「行くって、どこに?」
「取り合えず、ここを出よう」
「いいの?」
「ああ、一通り挨拶は済ましたし、もう用はない」
その言葉にホッとした。早くタカヤと二人きりになりたかったから。