ラブレターを君に
あの時、家で見たカズとは、あまりにかけ離れて見えた。



本当に此処に今いるのがあのカズなのか!、歌い、そして踊り、そのテンポの良さ、一曲一曲に込める魂の凄さに、美歌は、身体が硬直し、まるで蛇に睨まれた蛙のごとく、一歩も動けない状態に陥っていた。



目は、瞬きをもせずに、一心にカズを追っていた。



そんな中……会場が、暗闇と化した。


ファンの子達は、全員何故か上を見上げている。



「キャー!!!!カズっっ―――」


一声に奇声を上げる。が、その声も一瞬にして静まり返る。



ステージの真ん中にライトがあたり、そこには、ピアノとカズが………


そして…星が回りには写し出されているではないか………



ファンの驚きと感嘆のどよめきが会場中に響き渡る………



カズの演奏が始まった。



とっ、何故なのか?美歌の目からは、ひとりでに涙が溢れてきて…止まらない。



孝志が、それに、気付き、ハンカチを差し出すが……


美歌は、もう回りのすべてが、目に入らなかった。



ピアノの旋律に引き込まれていることのみが、理解出来ていた。



どうして……涙が止まらないのだろうか!




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