エリート医師に結婚しろと迫られてます
うわっー、どうしてこのタイミングかな。
と受話器を指でつまんで、耳に当てる。
聴診器のキーって音の方がましだ。
兄の威圧的な声がする。
「お前さ、今日、七時頃、出られる?」
兄からの電話だ。
あ~あ、どんなに空耳であってくれと願っても、兄の声を聞き逃したことはない。
でかい、早口、意味不明。
三拍子揃ってる。
出られるか、ですって?
兄は、生まれてからかれこれ、
30年以上経っているが、
世界が、兄を中心に回っていないことを、
知らしめる人物には、
まだ出会えていないらしい。
私は、天動説が誤りだったと、
学校で習った時に、
兄は、ひょっとしてその、
自己チューな考えも間違ってないのか、
こっそり反省したりしないのだろうか?
と、ひそかに期待したものだ。
それは、ない。多分。絶対に。
自己中ゆえに、自己から一ミリでも離れれば、死んでしまうのだろうから。