エリート医師に結婚しろと迫られてます
「このケーキは、浅倉先生の差し入れなの?」
うちの事務所の弁護士、浦島さんがやって来てお礼を言いに来た。
浦島さんは30代後半の人の良さそうな顔つきの男性だ。私の先輩に当たる。
ここに来た当初は、教育係の彼にいろいろ教えてもらった。
「えっ?はい」
私は、彼の姿を見て反射的に立ち上がった。
そして私は、美月の顔を見た。
ん?アシスタントって言ったけど?
なんで浦島先生のとこだけ?
「浅倉先生、そんなにかしこまらないでください。ケーキのお礼がいいたかっただけですから」
人のよさそうな笑みを浮かべ、なぜかいつも口元を手で隠して話す。
「先生は、甘いものお好きでしたか?」
「好きですよ」
私もです。
彼が例の『離婚弁護士』
別の事務所に勤める元奥様と、骨肉の争いを戦った離婚経験のある弁護士だ。
浦島先生は、いつも疲れはてた顔をしている。
戦ってみたけれど、争ってよかったとは言い難い。
いい人なんだけど。というのが美月と私の共通認識。
そして、いい人というだけでは、なぜか幸せになるのは難しい。
「ありがとう。おいしかった」
こうして、わざわざお礼を言いに来るようないい人なんだけど。
浦島先生が、出ていった後、美月が入って来た。
「ごめん、クッシーいらないって言うから、太郎にあげちゃった。なんか不幸そうな顔してるんだよね。なんか付いてそう」
「太郎って何よ。ちゃんと浦島先生と呼んでよ」
「大丈夫、ここだけにしてるから」
私は、美月と二人で笑った。
太郎より、離婚弁護士のほうがひどいかな?