エリート医師に結婚しろと迫られてます
「森谷さん?」
「ダメ…離れたくない。もう少しこのままでいたい」
背中に回った腕に、ぎゅっと力が入る。
「麻結?」
名前を呼ばれて、顎を指でクイッと上げられた。
すぐに柔らかい唇が、私の唇に優しく触れてきた。
ああ…ちょっと待って。
美月の言う通りいつ何時に備えて、口の中の匂いは何とかしておくべきだった。
最高級カルビの匂いに混じって、ハッカ飴の匂いがする。
彼は…気づかない振りしてるけど…何の匂いか分かっただろうな。
優しく触れる唇は、何度も重ねられるうちに、強く押し付けられ…こじ開けられ、私は、彼の欲しがるまま彼を受け入れている。
「麻結…早く帰ろう。こんなところで始めたら…止められない」
それには、全面的に賛成する。
病院の入り口に近い、歩道の上だ。
人通りは少ないけど、職場の人通ったりしないの?
私は、彼に寄りかかって、頷いた。
仕事明けだというのに、爽やかな森谷さんの香りを打ち消して、焼肉とハッカ飴の入り混じった強烈な匂いがした。