エリート医師に結婚しろと迫られてます
「どうぞ、お入りください」
ドアを開け、彼が私を先に部屋の中に入るように促す。
ドアが閉まるより、早くに彼の腕が私を呼び戻す。
「よかった。今日はもう君に会えないって思ってたのに」
「ん」
「麻結?」
「はい」
「いい匂いするね」
「ん?そうかな…」
やっぱり気が付いた?
まっすぐ私に注がれる眼差しも、優しく抱きしめてくれるその腕も、私のことが特別だという彼の言葉が、すべてを信頼させてくれるけれど…
あなたは…いつ、私のことをそんなふうに思うようになったの?
あなたを好きだっていう、女の人はたくさんいるけれど、どうして私を選んでくれたのか、私はその理由を知らない。
多分…あなたのことよく知らないうちは、あなたの心がどこに有るのかなんて考えたことなかった。
森谷さんの目が、私の感情の、細かな動きまで見逃さないくらいに深く見つめるけれど、それが、いつまで続くのか私には、分からない。
これが…こんなに完璧な男性じゃなければ、不安に思ったりしないのに。