エリート医師に結婚しろと迫られてます
「週末は、実家に帰るんですよね?」
私は、書類に印鑑を求めに来た美月にいう。
「ん、そうなりそう…ショッピングなら次の週にしてくれるかな?」
森谷さんのプロポーズを、受けなかった。
受けなかったというのは、微妙だ。
受け取る側は、はい、と答えない限り断られたと思うかも知れない。
この頃、そんなことを考えて、一人で悶々としていた。
というのも、彼からの連絡が来ない。
というのは、ひどく楽観的なものの見方で、
「断られたと思って、引いたんじゃない?彼」
私は、美月に言われるまで、
そういうふうに、彼が受け取った可能性があるって事に気づかなかった。
「バカね。そんな面倒なことするからよ。最初に「はい」って返事しておいて後で確かめればいいのよ」
「う~ん」
そのことも、頭になかったわけじゃないけど。
いちど、イエスって言ってもらったものをやっぱり止めますなんて、よほど強靭な心を持ってないと無理だろう。
むしろ…そういうのを避けたかったのだ。
彼が…自然に受け入れてくれるような。
「あのさあ、麻結。魚を釣るのに優しく網ですくうのと釣り針で口を引っ掛けて釣るのと違いはあるの?どうせ、焼いて食べるなら一緒じゃないの」
ごもっともですが…
焼いて食べるわけじゃないから、多少は違うんじゃないかな。
ためていたものを全部、美月に話してみた。
彼女は口には出さないけど、何かと私を心配して買い物に巻き込んだり、食事に誘ってくれた。
「まあいいんじゃない?麻結の良さがわからなければ、それまでのやつなのよ」
結局、そういって私を甘やかしてくれる。
「それで?森谷さんから連絡あった?」
「いいえ、何にも…」
そんな会話を繰り返して、美月は私に行動させようとしてるのか、あるいは、思いとどまらせようとしているのか、どっちとも取れる顔をしている。
「森谷さん、やっぱり…プロポーズしたのに断られたと思ったんじゃないかな…」
と美月が言い出した。
あれで、見た目よりずっと繊細で、麻結にプロポーズ受けてもらえなくてショック受けたんじゃない?」