エリート医師に結婚しろと迫られてます
それなのに、
あろうことか、兄は、美月を妹ですと、
自分の後輩に紹介し始めた。
「妹の麻結子です。
よろしくお願いします」
美月も兄に合わせ、よろしく
お願いしましたします。
だなんて、頭を下げている。
美月は、涼しげに微笑んだ顔を彼に
向けられて、緊張気味に答えた。
「そちらは?」
森谷さんに、言われて
心の準備が出来てなかった私は、
彼の質問に狼狽えてしまった。
「えっ、あの…み…美月と申します。
と仕方なく答える。私は、麻結子先生の
アシスタントをさせていただいています」
「どうも。初めまして」
と言って彼は、私に優しい視線を向けた。
潤んだ目をまっすぐ向けられて、クラッときそうになる。
兄が、森谷さんに向かって話を始めた。
彼の視線が兄の方に向かって、ほっとする。
いくら、観賞用に見てるだけといっても、あんなふうに見つめられるとドキドキしてしまう。
「いいだろう?ここ」
昭和の初めに建てられた日本家屋で、
黒塗りの柱が、
建物を重々しく見せている。
が…
兄は、顔を思い切り私に向けた。
嫌な予感。
「なあ、麻結子、実家の方が年代的に
ちょっと古いな。柱は黒檀か?
でも、この家も、
なかなか金がかかってるぞ」
お兄ちゃん、
私に向かって話すの変でしょう?
森谷さん、さっきから、
ずっとこっちを見てますよ。