エリート医師に結婚しろと迫られてます
ドアベルがなって、私は、数十年後の現実に引き戻された。

ドア越しに、のぞき穴から見える
真理絵は、背も高くなっていた。

憎らしいことに、彼女の体型は、
一ミリだって劣化してなくなって、
私のように油断すると、
パン生地のようにお腹のぜい肉があふれ出すこともない。

レンズの加減で多少、歪んで見えるものの、とってもきれいな一人前の女性に成長してた。

あれから、私は言うまでもなく、
生きていくために、知力以外さじを投げてたわけだけれど。


こうして、ドアの小さな穴越しに
のぞいてみたりすると、人相ってまったく分が悪い。

こんな姿に耐えられるのは、本当に美人だけだ。


これから、
誰かの部屋を訪ねるとき、不用意に、のぞき穴に近づくのは止めよう。



それより、真理なんでこんなとこにいるのよ?


真理絵が朝早くから、なぜか、
ドアを開けろとベルを鳴らしてる。

「何してるの?こんな時間に」

鍵を開けると、真理絵がそそくさと、
部屋に入って来た。

彼女は、買い物袋をキッチンのテーブルにドサッと置いて、
すぐに私のおでこに手を当てる。

「大丈夫?風邪引いたの?」


そう言えば、昨日遅くに真理絵から電話があった。
ひどい声だと言われたから、

正直に、お風呂に入って、
そのまま寝てしまい風邪を引いたと、
うっかりしゃべってしまった。


真理絵とは小学生の時から、
30歳が近くなるまでこんなに長く、
付き合いが続くなんて、夢にも思わなかった。
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