エリート医師に結婚しろと迫られてます
「麻結?風邪はよくなったの?」
真理絵が近くまで来て、私の額に手を当てようとする。
「うん…もう大丈夫だって」
私は、真理絵の手を押しとどめる。
完璧だ。まったく同じ。
確か、前にこんなシチュエーションもあったな。
真理絵は、長い髪を緩くまとめて、
砂浜に遊びに来た女神様みたいに微笑んでいる。
その時は、森谷さんみたいな
完璧な男性じゃなくて、
同じ中学くらいの出っ歯の冴えない男の子だった。
二人で会う約束して出かけたら、
偶然、同じように、ここで真理絵に出くわした。
その男の子は、自分が出っ歯だってこと
忘れて、真理絵を見た瞬間、
真理絵にぽーっとなって、恋に落ちてしまったのだ。
彼は、隣にいた私のこともすっかり忘れて、
女神様に夢中になって私を置いて女神様にまとわりつく最低な男の子だった。
「後ろの方は?」
くすくす笑いをこらえながら、真理絵が尋ねる。
「初めまして…森谷と申します」
森谷さん、丁寧に挨拶すると、
森谷さんも、かしこまった様子で、頭を深々と下げた。
「こちらこそ、初めまして」
と真理絵が挨拶した。真理が何か言いたそうな顔で、森谷さんに向かって挨拶をする。
「せっかくですから、もう少し歩きませんか?」
と真理絵が言い出した。
背後に海がキラキラ光って、
特殊な効果を生み出して、女神様に有利だったのかも知れない。
「いいよ」私が応じた。