エリート医師に結婚しろと迫られてます
森谷さんは、真理絵一人を先に行かして、
私と並んで歩いている。
思いだしたくないけど、出っ歯の男の子と3人で歩いていて、私を置いて真理絵に付きまとって話しかけていたのは、この道だ。
真理絵の表情を気にして、う~んと鼻の下を伸ばして。
親しい関係じゃなくても、どの男の子も反応は、みんな同じだ。
真理絵を見ると、彼女と話したくて、私の存在を忘れる。
森谷さんも、そんなふうに真理絵の横に
並んで歩くんじゃないかと思った。
「初めまして」ってきっかけを作って、真理絵の気に入りそうな話で誘って。
けど、彼は、そんなふうにはならなかった。
森谷さんは、真理絵と距離を取って、
ゆっくり私と並んで歩いている。
絵的には、森谷さんは、
真理絵と並んだ方が、断然人目につく。
雑誌の撮影みたいに見えるのに。
それなのに、彼は、
狭い道を私に合わせてゆっくり歩く。
私との距離を空けないように、
話が聞こえにくくなると、
背中に手を当てて、私の体を、
軽く抱きしめるように引き寄せる。
その、大きな手のひらが背中に触れる感覚が心地よかった。
彼に触れられるのも、
触れるのも、気持ちがいい。