From..
「紫音、俺は……お前に贈る言葉なんてない…」

「令志…?」

「今まで過ごして来た日々…。少ないだろうけどどれもが大切な思い出だ…。語ることなんて出来ない…。だからよ…。これだけ言わせてくれ…ありがとうな」

「ぷ…令志らしい…ね。こちらこそ…ありがと」

令志はそういうと後ろを向いてしまった。涙を見せたくないんだろう…。

「…令志…泣いてる?」

紫音がからかいながら令志に尋ねる…。

「ばっ…ばか…泣いてねぇよ…」

「じ…じゃあ…こっち向いて…みてよ?」

紫音の言葉を受けても、
令志は振り返らない。

俺には分かったよ。お前…泣きすぎだから。せっかくの顔が台なしじゃんか…。

「れ…令志?」

「紫音っ…!お前と過ごした日々…忘れねぇから!」

「ばか…声…震えてるじゃん…。令志…こちらこそ…ありがとう。楽しかったよ…」

紫音がそう言うと、令志はクルリと紫音の方を向いた。

「…令志…。泣いてるじゃん…」

「め…目にホコリが入ったんだよ!」

そう言うと紫音は微かに笑った。

その笑顔は…あまりにも儚かった。
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