From..
「私、好きな人がいるんだ」

百合菜からその言葉を聞いたのは百合菜と出会ってから六ヶ月が経った頃だった。

「だ……誰?」

「ぜーったい内緒だからね!如月君だから言うんだからね!」

百合菜は顔を真っ赤にさせている。

「分かってるよ!早く教えてくれよ」

心の奥では俺の名前を言ってくれることを望んでいた。

しかしその望みは次の言葉で完全に断ち切られた。

「私…若葉 翔君が好きなんだ…」

俺は強い衝撃を受けた。 あの…お人よしで有名な若葉 翔のことを好き?

俺はいちよう百合菜に確認をとる。

「若葉 翔ってあの優しいで有名な……?」

「うん…。私も若葉君の優しさに惹かれちゃってさ…」

何と皮肉なことだろう。
俺が追い求めていた、“優しさ”は、意図も簡単に俺から初恋の人を奪ってしまった。

だけど、何で百合菜は俺に打ち明けてくれたんだろうか?

俺はその疑問を百合菜に話してみる。

「私…この学校で男友達って言えるのは如月君しかいないんだよね」

「そっか…」

俺はショックだった。
百合菜にとって俺は…“友達”だったのか……。
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