HE IS A PET.

 怜は大人しく頷いたけれど、何か言いたげにも見えた。

「どうかした?」


「あ、ううん……何でもない。どうぞよろしくお願いします」

 深々と腰から上体を折り、二秒ほど置き、ゆっくりと元に戻るという完璧な『最敬礼』をして、怜は笑みを見せた。


「あ、うん。こちらこそ、よろしく。まあテキトーにゆっくりして。狭いけど。私は普段は殆どいないから」


 今日は怜を引き取るために残業を切り上げて帰ったけれど、いつもはもっと遅くまで会社にいる。怜といる時間は、そう長くないだろう。

 休日は休日で、怜の好きなように過ごせばいいし。
 と伝えると、怜は小さく頷いてお礼を言った。


「んじゃ今日は、もうお風呂入ってゆっくりしなよ。私はその間に着替えて、自分の用事しとくから。あ、シャンプー類、こだわりなかったら置いてあるの使って」


「あ……俺、後からでいいです。倉橋さん先に。お風呂浸かって下さい。俺シャワー使わせてもらえたら十分なんで。シャンプーも持ってきてます」


「あー、また敬語になってる。敬語禁止。倉橋さんって呼ばれ方も、仕事してる気分になるからやだ」


 怜は細い瞳をぱちくりさせたあと、思案顔で言った。


「え~…と、じゃあ……咲希さん?」


「ん、それでいーや」



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