HE IS A PET.
 なるべく人の物を使わないようにという遠慮なのか、使いたくないという信念なのか、怜は持って来られる限りの物を持参してきたようだ。


 さすがにテレビは持って来なかったから、お風呂上がりは、うちのテレビを一緒に見た。

『超常現象・検証スペシャル』と銘打った特番だ。

 宇宙人っていると思う?と怜に訊くと、思うと答えた。


「咲希さんは?」

「んー、考えたこともない」

 即答すると、怜は声を出さずに笑った。


 宇宙人なら、目の前にいる。君だ。

 出会ってすぐに理解できるなんて勿論思っちゃいないけれど、分からなさすぎる。

 見ず知らずの女の家に転がり込めるのだから、相当図太い神経の持ち主かと思いきや、オドオドしてひどく遠慮がちで、あらゆる私物を持参するという潔癖ぶり。


 距離感も不自然だし。

 普段一人でゆったり腰掛けている二人掛けソファーに、微妙に右に寄って座ってる私の足下、膝に触れそうな位置で、怜は体育座りしている。

 いくらそう広くないリビングだと言っても、もう少し離れるだけのスペースはいくらでもあるのに。

 わざわざ寄り添うような距離に座って、控え目に膝を抱え、わずかな緊張を漂わせる背中に、私まで緊張してしまうじゃないか。



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