HE IS A PET.
怜の寝床は、リビングの隅に設置した簡易エアーベッドだ。
『場所を取らない、片付け楽々、広げて三十秒でエアー充填OK』が謳い文句のそれは、いつかどこかの飲み会で貰ったビンゴ景品。
こんなの要らないと思った物が、あって良かった。
謳い文句に偽りはなく、簡易に出来上がった怜の寝床。
半分眠っているような怜をそこに誘導する。
ぐらぐらと不安定に揺れながら、眠そうな声を漏らす怜は、ペットというよりは、ちっちゃな子どもみたいだ。
空気の上に横たわらせると、所在なさげな顔をした。
しっかりしたスプリングがあるベッドと違って、やはり寝心地は悪いのかもしれない。
たしなめるようにして、怜の体に綿毛布を一枚掛けた。毛布も枕も、怜がアズミンちから持って来たものだ。
さすがにベッドは持って来れなかったけれど。
「おやすみ、怜」
リモコンを手に取り、照明を二段階落とした。
LEDの豆電球が、暗闇に青白く光る。
「……おやすみ」
怜が答えた。
綿毛布をぎゅっと掴んでいた両手が、すっとあたしに向かって伸びてきた。
その片方には、腕時計が嵌まっている。
「怜、時計。外して寝ないと」
「ん、いい……おやすみの……して」