HE IS A PET.

 随分今さらな確認に、私は目を白黒させた。

 とりあえず、アズミン。帰ってきたら殺していいかな?


「私が女だって確信、持てないの?」

 大人げなくブータレて、正面に座る怜を睨み付けた。


「どーせ、アズミンの方が女らしいですよだ」


『グラマテ』の美形ヴォーカルがアズミンの恋人だったことなども無駄に思い出してしまい、余計にイライラしてきた。


「ごめんなさい。咲希さんは、どう見ても綺麗な女の人なのに、変なこと訊いて……」


 私の機嫌の悪さに、怜はしょんぼりした。

 可哀想なほどしょんぼりしていたので、私も怒りすぎたことを反省して、謝った。


「ごめん、怜」

「怒ってない?」

 おずおずと尋ねる怜の瞳は、涙で潤んでいる。

 かろうじて瞳の縁に留まっているそれは、後わずかな刺激で零れ落ちそうだ。


 泣かせてみたい。
 ふとそんな衝動に駆られるけれど、私はそれを胸の内に留めた。


「怒ってないよ」

「許してくれる?」

「うん。許してあげる」


 アズミンのペットがこんなに可愛いなんて、誤算だった。

 頭を撫でたら、こらえきれなかったらしい涙が零れ落ちた。


 結局泣かせてしまった罰の悪さから、私はそれを咎めた。

「怜は男の子でしょ? メソメソしない」
  




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