HE IS A PET.
Witch



 チトセから電話があったのは、それから三日後だった。


「なあ、アイツに話したのか?」

 開口一番、そう訊かれてドキリとする。

「話して……ないけど、何で」

「悠里が住んでたマンションに、犬がうろついてるらしーから。喰われる前に、しっかり手綱握っとけよな」

「犬って、怜のこと? 喰われるって何のこと」


「あそこには、いま魔女が住んでんだよ。若いの見るとすぐに喰っちまう」

 千歳一家が引っ越して、しばらく空いていたマンションに今はチトセの叔母さんが住んでいるらしい。
 叔母といってもまだ三十代で、独身貴族――もとい魔女らしい。

 怜がそのマンション周辺をうろついているということは、悠里を捜しているんだろうか。
 私があんな話をしたから?


「犬から接触があっても、知らぬ存ぜぬで通せって、魔女には言ってある。あんたもしっかり掴まえとけよ」

 チトセは口早にそう告げると、電話を切った。


 どうしよう。アズミンに知らせた方がいいんだろうか。
 アズミンと一緒にいたいと言いながらも、悠里を捜している怜の気持ちは、今どこにあるんだろう。

 彷徨っても悠里には辿り着けなくて、諦めて帰る場所がやっぱりアズミンの元であるのなら。
 黙ってそれを見過ごすことしか出来ないと思う私は、弱くて卑怯だ。


 怜に真実を伝えるという決断はどうしても出来なかった。


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