HE IS A PET.



 決算書類を四期分までチェックして、至った結論は『完全にクロ』だった。

 通称『飛ばし』という手法で子会社に負債を付け替えたり、資産の減価償却費を操作したり、売上の水増しをしたりと、様々な科目で粉飾された虚偽の計上利益は、約十億。

 それが発覚したからどうすればいいかという判断は、私にはできない。
 上司に報告を挙げて、指示を仰ぐしかない。



「どうもありがとうございました」

 大量の書類を経理責任者に返してお辞儀をした時、お腹が、きゅるる~と小さく鳴った。

 お腹、減ったなあ。お昼食べる時間なかったし。

 あっ、怜。

『お昼は私が作る』という約束を破って、連絡も入れていない。

 ちゃんと食べたかなあ……食べてない気がして、心配だ。


「あのう……」


 帰り際、声を掛けてきたのは五時間前に名刺交換をした『小松常務』だった。


「野上さんは、何か特別な事情でこちらに来られないんですか? 電話にも出られないですし……」


「野上は講習会で終日連絡が取れませんので、後ほど上司の広瀬より連絡させて頂きます」

 上司が用意していた言葉を伝えて一礼した。

 女でペーペーの私にそれ以上訊いても無駄だと判断したらしく、

「分かりました、宜しくお願いします」

 と答え、常務は頭を下げた。


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