HE IS A PET.


 怜は、アズミンのペットだった。

『毎日一緒に寝てるし、おやすみのキスもしてるし、抜いてもあげてる』

 悪びれることなく、そう私に教えてくれたアズミンだけど、他人に堂々と話せる話じゃないだろう。

 私も同罪だ。怜を預かって、アズミンの飼い方に倣った。

 報酬として貰ったシャネルの財布は、使う気にも捨てる気にもなれず、クローゼットの奥で眠っている。


「それにしても、アイツは心得てるよな」

 チトセが意地悪く笑う。

「健気で痛々しいよ」

 そして再生の終わった動画を閉じ、違うデータを開いた。

「咲希。お前に忘れて欲しくねえことがある」

 ……なに?
 まるで恋人ごっこの続きのように、私の名前を呼ぶチトセに違和感を覚える。


 目に飛び込んできた画像に、頭が真っ白になった。

 シーツを纏っただけの姿で、抱き合う男女が映っている。

 女の上に乗っている男の、肩から上腕にかけては刺青がある。
 その肩に両腕をかけて、目を閉じて眉間を寄せている女は――見間違えようもなく、私だった。

 男の刺青にも、さっぱりと短い黒髪にも見覚えがある。

 でも身に覚えがない。全くない。


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