HE IS A PET.
「心配かけて、ごめん。大丈夫だから。あっくんには、俺が迷惑かけたんだ。アズミにもいっぱい迷惑かけて……いっぱい貰ってばっかりで、いつか、返したかった。けど、もう……返せない」
途切れ途切れ、懸命に紡がれる言葉は、アズミンに宛てたものだった。
「アズミ、ありがとう。アズミは、俺の……誇りだったから。ごめん……もう、忘れて」
怜らしい怜だった。相変わらず謝ってばかりで、拙い文法を喋る。
きゅっと結んだ唇を無理して持ち上げて、笑おうとするところも。
でも怜は、アズミンに別れを告げるなんてしない。
誰になんと思われようが、アズミンとずっと一緒にいたいと言ったんだ。
「これ、チトセが言わせたんでしょ」
「人聞きわりぃこと言うなよ。お前が安住社長のとこに居続けると、迷惑かかんじゃねえの?って、親切心で教えてやっただけだ。社長さんが金に物言わせて、高校生男子を囲ってたなんてよ。世間に知れたらどうなんだろうなあって。しかもそいつを通じて、指定暴力団員と交流がある。ビジネスイメージ、致命的なんじゃねえの?」
「それを脅しって言うんだよ」
「脅してねえよ、事実だろ。ほんとのこと言われて後ろめてえのは、後ろめてえことだっつう自覚があっからだろ」
チトセの言うことは確かに事実だ。
アズミンに拾われたとき、怜はまだ高校生だった。不登校で高校を留年していた。
アズミンとの同居は、怜の両親の承諾を得た上のことだ。親からは感謝されている。
だから後ろめたいことなんて何一つない……と言い切れたらいいけれど。