HE IS A PET.


「怜のことは、悪いようにはしないわ。あたしを信じて、任せてちょうだい」

 いつになく真剣な瞳をしたアズミンを、信用しないわけにはいかない。
 というより、私が信用するかしないかなんて関係なく、怜の飼い主はアズミンだ。


「っつうことで、ほらよ」

 チトセがいつの間にか手にしていた、私のバッグを押し付けてきた。
 力なくそれを受け取る。


「咲希、あのこと忘れんなよ」

 見せられた画像のことだろう。
 別れ際のチトセは、何故だか少しだけ優しい顔に見えた。


 幸誠企画の事務所を出て、狭苦しいエレベーターに乗った。
 一階に着き、開いた扉の前に立っていたのは、

「あ、」

 会いたくないプリン頭だった。

「はよん。どしたん、こんな朝はように」

「梶こそ。こんな早くから、出社?」

「どんだけ働かすねん。今から帰って寝るとこやで。姫は事務所泊まったん? よう寝れた?」

 人懐っこい口調に、乾いた笑み。
 変わらない梶にイラつくのは、私の見る目が変わったからだろう。

「あ、チトセが寝かせへんかったとか? いやらしいなあ」

「いーえ、お陰さまでぐっすり眠れました」

「あれ、なんか怒ってへん? 気に障ったんなら、ごめんやで。俺、デリカシーない、よう言われんねん。それか、チトセとなんかあったん?」

 シラを切り通すつもり?

 私に睡眠薬を飲ませたのは、梶に違いないのに。


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