HE IS A PET.


「無理だよ、歩いてなんて。どんだけ距離あるか、知ってるの? すっごく、歩かなきゃいけないんだよ?」

「うん、知ってる。千三百キロくらい」

 って、どのくらい? 聞いても、すぐにピンとこない。

 東京から沖縄までが、直線にして千五百キロって聞いたことがあるから、東京から南九州までくらいだろうか。

 気が遠くなりそうだ。

「……無理」

「無理じゃないよ。だって、実際に歩いてるお遍路さんが大勢いるんだ」

「だけど……」

 怜には無理な気がする。華奢な身体は、そう丈夫じゃない。

 千三百キロの苦行は、

「……悠里のために?」


 悠里の死を知って、絶望の底にいるんじゃないか、自棄になっているんじゃないかと心配だった怜が、意外にも落ち着いている理由が分かった。
 
 前を向いているからだ。悠里のためにできることを見つけたから。


「悠里のため、じゃない。今さら俺が何をしたって、悠里を一人で死なせたことには、変わりない」

 怜が重々しく言った。





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