HE IS A PET.

「それでも、何かしないと気が変になりそうだから。自分のための、自己満足。八十八箇所を巡り終えたら、何かが変わるかもしれないって、漠然と思う……だけ」

 変わるとしたら、それはきっと怜自身だろう。漠然とそう思った。

 前にテレビで見た特集では、引きこもりニートの若者たちが、社会復帰活動の一環として、遍路旅をしていた。

 過酷な道程と他人との助け合いを通して、みるみる逞しくなっていく彼らの姿を追っていた。

 だけど、それはNPO法人の支援の元で、テレビカメラが回っている話だ。
 急に思い立った怜の不用意さとは、安全基準が違う。

「怜が考えて決めたことなら、反対はしないけど。一回東京に戻って、準備を万全にしてから出直した方がいいよ。もう梅雨入りらしいしさ、夏は暑いしさ。季節を見送って、秋にまた来ればいいじゃない」

 怜はゆっくりと首を横に振った。

「先延ばしにしたら、始められない気がするから。準備はするよ、こっちで」

「先立つ物はあるの?」

「お金?……ある、二万くらい」

 二万ぽっち? 東京までの帰り賃にしかなんないじゃん。

「二万で、何が出来るの?」

 いくらか知らないけれど、お遍路衣装を揃えるだけで無くなるんじゃないの?

 いくら禁欲的な巡礼といえど、ご飯を食べたり宿に泊まるお金は必要だろう。

「御札買って、判子押してもらう手帳?みたいなの買って。あとは寝袋とリュックが買えたらいいかなって、思うんだけど」





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